峠越えを中心としたサイクルツーリングの記録、ちょっと懐かしい峠みちやカタログ、70年代〜80年代のヨーロッパのロードレース、プラモデル製作などについてご紹介しています。
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はじめに
このページは1969年の日本Can-Amに優勝したTOYOTA-7の製作記です。
TOYOTA-7のキットは、当時、日本のプラモデルメーカーから幾つも発売されましたが、いずれも1960年代〜1970年代に発売されたものであり、最近のキットはありません。
今回の製作のベースキットは、旧オオタキから発売された1969年の日本グランプリのトヨタ7です。
1.TOYOTA-7について
TOYOTA-7は、当時のトヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)のワークス・チームが開発した二座席レーシングカーで、当時の国際自動車連盟(FIA)競技車両分類におけるC部門第7グループに属しています。
TOYOTA-7には、1968年にデビューした3リッターNAエンジンの"415S"、1969年にデビューした5リッターNAエンジンの"474S"、1970年にデビューした5リッターターボエンジンの"578A"の3世代があります。
今回製作したモデルは5リッターNAエンジンの"474S"です。"474S"は1969年の日本グランプリでの勝利を目標に開発され、富士1000kmでデビューウインを飾り、NETスピードカップでもニッサンR381を破ってワンツーフィニッシュという結果を出しました。
そして、満を持して挑んだ日本グランプリでは、6リッターエンジンを搭載したニッサンR382の後塵を拝する結果に終わったものの、その年の11月に開催された第2回日本Cam-Am(ワールドチャレンジカップ・富士200マイルレース)では、大型ウイングを装備したTOYOTA-7が、本場米国から参戦したCan-Amの強豪を破って優勝を果たし、有終の美を飾りました。
写真は、第2回日本Cam-Amでトップ争いをしている川合稔のTOYOTA-7とJ・オリバーのオートコーストTi22です。
2.使用キット
前述したように、今回は旧オオタキのキットを使用しました。日本プラモデル工業協同組合から2008年に刊行された「日本プラモデル50年史」の付録CD-ROM「日本模型新聞にみる昭和プラモデル全リスト」によれば、1970年11月にモーター付き500円で発売されたのが最初です。
その後、箱絵を変更しつつ何度か再販されており、今回製作したキットは、1978年9月に800円で発売された第2版と思われます。
このキットは箱絵にあるように、1969年の日本グランプリ仕様をモデル化したもののようですが、日本グランプリでは、ホワイトとブルーのボディカラーは川合稔のクルマであり、ゼッケン5は鮒子田寛/高橋晴邦組です。また、TOYOTA-7の車名ロゴやスポンサーのステッカーの色も正しくありません。この辺り、意図的にそうしたのか単なるリサーチミスなのかは定かでありませんが、いかにもオオタキらしいなあという感じはします。
ボディスタイルは実車の形状をうまく再現していて、一見そのまま組み立てても良いような気もしますが、フロントノーズは端正過ぎる感があり、もう少し迫力を持たせたいと思います。
また、このキットは当時の自動車キットでは当たり前のモーターライズ仕様となっています。それでも、ギヤボックスの巧妙な設計によって、モーターとギヤボックスをエンジン内部に収めることで、簡略ながらも5リッターV8エンジンを再現しています。また、単3電池2本をシャーシ両サイドに格納することで、運転席も再現しています。
3.参考資料
今回の主な参考資料は「日本の名レース100選-020 '69 日本GP」です。このムックは株式会社三栄から刊行されており、100選と謳ってはいるものの、2017年のVol.74を最後に刊行が止まっています。私は興味のあるレースのもののみ30冊ほど購入してあり、今回の日本Can-Am優勝車についてはこのムックが基本的な資料となります。
ただし、日本Can-Amに出走したTOYOTA-7は、スポイラー形状のリヤカウル後端をカットした上で、車体幅以上の大きなウイングを装備しているため、ボディの改造については、インターネット上の各種画像等を参考にしています。
4.製作過程
製作に当たっては、ボディや一部パーツの基本的な修正、日本Can-Am出走車としての改造を同時並行して進める必要がありました。
4-1.ボディ・ウイング
- フロントノーズ下面の改修
仮組みしてみると、フロントノーズ下面がしゃくり上がっている点と先端部分が薄いのがとても気になりました。そこで、2分割されているフロントノーズと下面パーツの間に2ミリ厚のプラ板を挟み込んで、フロントノーズ下面が地面と平行になるようにするとともに、先端部分がダルな形状になるよう、整形しました。 - フロントホイールアーチの形状修正
タイヤ外径に合わせて綺麗なRとなるように修正しました。 - リヤカウル加工
スボイラー形状のリヤカウルを切除して、日本Can-Am仕様に加工しました。 - リヤウイング追加
日本Can-Am仕様の特徴であるウイングを作成。0.5ミリ厚のブラ板を2枚貼り合わせて、翼断面形状を再現してあります。
4-2.コックピット・その他
- ドライバーズシート右側にシフトレバーを追加
- インダクションボックスの形状修正
ロールバー上面に被さるように空気取り入れ口を延長しています。 - オイルクーラー取り付け方式の変更
トランスミッション後端部にオイルクーラー取り付け台座を追加。台座にはサードパーティのメーターレンズを流用したブレーキランブを取り付けてあります。なお、実車の後方左側にはオイルタンクも装備されていますが、今回はオミットしました。
上記の改修、加工を施した状態は以下のようになりました。かなり手間は掛かりましたが、日本Can-Am出走車のイメージは、それなりに再現出来たと思います。
5.塗装とデカール貼り
改修、加工を終えてから、ボディとシャーシはグレーサフを吹いて、改修部分の最終チェックと細かな修正をした後、ボディ表面はピュアホワイトとブリリアントブルー、シャーシとコックピットはセミグロスブラック、ウインドウシールドはスモークで塗装しました。なお、塗料はいずれもタミヤのスプレーです。
コックピット内部、エンジン、シート、ステアリング等も、基本的にタミヤのスプレー、ラッカー、エナメルなどを使い分けて塗装しています。
デカールは、Webサイトくるま村工房(スロットレーシングカーボディワークショップ)で制作販売している製品を使用しました。このサイトは、1/24スケールを中心として、Can-Amや富士GCシリーズ、60〜70年代の内外のレーシングカーの高品質なデカールを提供しています。
6.完成
塗装終了後にウィンドウシールド、リヤビューミラー、制作したウイングなどを取り付けて、とりあえず完成です。
このキットは当時のモーターライズキットということもあって、実車とは多くの相違点や省略された部分がありますが、ボディスタイルの再現性は現代の視点で見てもなかなかのものだと思います。
完成したキットを見ていると、小学生の時にテレビ中継を観て、本場のCan-Amの強豪を破って日本のTOYOTA-7が優勝したことに歓喜した、懐かしい思い出が蘇りました。