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はじめに

 このページは1972年9月に開催された「第14回日本アルペンラリー」に参加したTE27スプリンタートレノのラリー仕様車の製作記です。ドライバーはリトルジャイアントと呼ばれた綾部美津雄氏で、この時の総合順位は19位でした。

1.TE27スプリンタートレノについて

TE27レビン・トレノ TE27スプリンタートレノはカローラレビンとともに1972年3月に登場したトヨタのスポーツモデルです。1970年5月に発売された2代目カローラ/スプリンターの2ドアクーペに、初代セリカ1600GTに搭載された1.6リッターDOHCの2T-G型エンジンを搭載。足回りも専用ハードサスペンションで締め上げ、FRP製オーバーフェンダーと、当時としては超扁平タイヤの175/70HR13を装備していました。

 1.2リッタークラスの無用な飾りの一切無い地味なボディに1.6リッター115馬力のエンジンという組み合わせに加え、黒一色の内装、穴空きのハイバックバケットシート、ダッシュボードに追加された電流計、油圧計、油温計など、当時のトヨタの市販車とは思えない走り一徹のクルマでした。

 このクルマが発売された当時、ラリーカーやレースカーが好きな中学生の私には羨望の1台となり、大人になったらこういうクルマに乗るんだと心に決めたものでした(笑)
 ちなみにそんな私の最初のマイカーは、2T-Gを搭載したTE71カローラセダン1600GTでした。

2.ベースキットと製作イメージ

フジミ TE27 レビン 1974年 第16回日本アルペンラリー出場車 ベースキットはフジミ模型の「TE27レビン 1974年日本アルペンラリー出場車」です。このレビンのキットは市販車バージョンが10数年前に発売され、その後、峠シリーズ、インチアップシリーズ、ヒストリックレーシングシリーズ等、様々なバリエーションが展開された内の一つです。

 現在も市販車バージョンは時々再生産されている息の長いキットの一つですが、ボディスタイルには色々と難点があって、実車のイメージに近づけるためにはそれなりの改修が必要です。

 また、今回製作しているキットは、有名なラリードライバーの綾部美津雄氏の「1974年日本アルペンラリー出場車」となっており、当初はこのまま製作しようと思って、数少ない資料をあさっていたところ、綾部美津雄氏がTE27で出場したのは1972年の日本アルペンラリーであり、しかも車種はレビンではなくトレノということが判明しました。

 トレノとレビンはボンネットのプレス形状、フロントグリルやテールライト回りがかなり異なっており、このキットからトレノに改造するのは結構敷居が高いですが、試行錯誤しながらトライしてみることにしました。

3.参考資料

オートスポーツイヤー 1973年版  自宅には60年代〜80年代のオートスポーツ誌がまだ20冊程度残っており、今回はその中の年鑑形式の1973年版「オートスポーツイヤー」、ヤエスメディアムック101「レビン・トレノメモリアル」などを参考にしています。

 左記はオートスポーツイヤーのラリーカー解説記事の抜粋ですが、このトレノがまさに1972年の日本アルペンラリーに出走した綾部美津雄氏のトレノです。
(左記記事は画像クリックで拡大表示します)

 1959年から1976年まで18回開催された日本アルペンラリーは、毎年コースが異なるものの、荒れたダートの山岳ルートを中心に3泊4日・走行距離約2000kmの規模で開催されていた、極めてハードな山岳ラリーでした。
 1972年は長野・群馬・信州・栃木・岐阜の山岳道路を周回するコースで、サイクリストにはなじみ深い多くの峠や林道が含まれています。現在はそれらの大部分が舗装されていますが、当時はかなりの悪路でした。

4.ボディの製作

4-1.基本的な改造箇所のチェック

実車との比較 トレノに改造する前に、まずは未加工状態のボディを実車画像と比較してみました。
 もちろん素の状態でもレビン以外には見えず、それなりに実車のボディスタイルを再現していますが、気になる部分はいくつかあります。

  1. フロントオーバーフェンダー取り付け位置
    実車よりもかなり上に取り付けられています。
  2. ウインドウの上下方向が狭い
    そのため前後とも窓が小さく見えます。
  3. リヤウインドウ形状
    特に下面がやや直線上にせり上がっています。
  4. ルーフ形状
    実車に比べると平面的。
  5. Cピラー形状
    角度が寝ていることで横幅も狭く見える。

 以上の問題点により、ボディ下半分のボリュームが相対的に大きく、コンパクトな実車のスタイルを損ねているように思います。そこで、最低限の対応として、上記の1〜3の改造を施すことにしました。

4-2.レビンからトレノへの改造箇所

レビン・トレノ差異フジミのキットは、1972年3月のデビュー後わずか5ヶ月後の1972年8月のマイナーチェンジで前後の顔つきが変更された代のものです。今回製作するのは初期型のトレノであり、実車の画像を参考にして改造箇所を洗い出してみました。

  1. フロントグリル
    レビンとトレノは全く違うので全面的作り直しが必要。
  2. テールライトとリヤガーニッシュ
    デザインが異なるため、これも全面的作り直しが必要。
  3. ボンネット
    プレス形状が異なるため、やはり全面的作り直しが必要。
  4. その他
    フロントフェンダー部のウインカー位置、リヤフェンダー部のルーバデザイン、車名オーナメントなど。

4-3.ボディの加工

 初めに4-1項の改造を施すことで、基本的なボディスタイルの手直しを行いました。

  1. フロントオーバーフェンダー
    フロントオーバーフェンダーを一旦切り離し、フェンダーアーチに2mm角のプラ棒を接着・整形してフェンダー位置を下げた上で、切り離したオーバーフェンダーの下端部をカットした上で約2mm下に再接着。
  2. ウインドウの上下方向拡大
    窓枠とレインモールをカットし、レインモールがモールドされていた位置に、プラ板から1.5mm弱の幅で切り出した線材で窓枠を追加。※リヤウインドウの高さもドア窓枠に合わせて拡大。
  3. リヤウインドウ形状
    やや直線上にせり上がっているリヤウインドウ下辺の形状をなだらかなカーブ状に整形。

 次に4-2項の改造を施すことで、トレノのボディに作り替えました。

  1. フロントグリル
    最初はプラ板やプラ棒で製作しようと考えましたが、ラジエータグリルやヘッドランプベゼルの作り込みに難儀しそうなため、ネット上で色々調べていたところ、アシェット「国産名車コレクション スペシャルスケール1/24」の中に初期型トレノがラインナップされていることを知りました。そこで、このミニカーを入手して、フロントグリル回り全体を複製することを思いつき、オークションサイトやショッピングサイトを検索しまくり、なんとか入手することが出来ました。
    複製方法は、100均で売っている「おゆプラ」をミニカーのフロントグリルに押しつけて型取りし、固まった型に樹脂を流し込むというものです。
    流し込む素材は当初UVレジンにしてみましたが、硬化した複製は固くて柔軟性が無いため、加工に難がありました、そこでタミヤのポリパテを使ってみたところ、切削加工が楽で適度な硬さもあり、ボディと現物合わせしながらヤスリ整形して、なんとかトレノのフロントグリルを再現出来ました。
    なお、ヘッドランプとフォグランプはバルケッタから発売されているライト反射カップとライトレンズを埋め込みました。
  2. テールライトとリヤガーニッシュ
    キットのガーニッシュを削り取って、プラ板からトレノ初期型のガーニッシュを作成。テールレンズは余剰パーツの透明パーツを加工してはめ込みました。
  3. ボンネット
    キットのボンネットを切り取って、1mm厚のプラ板から新規製作したボンネットに付け替えました。中央の凸状のプレスはエバーグリーンの△型のプラ棒を接着、左右の凹状部分は切り込みを入れて接着し、ペーパー掛けで仕上げました。

ボディ加工


5.内装の製作

内装 ラリーカーですから、実車のシートはフルバケットシートに交換してあったはずですが、フジミの内装はバスタブ状で、フロントシートは座面、リヤシートは全面が一体モールドされているため、シートの加工は潔くあきらめ、フロントドア内張のみ簡単に追加工作しました。

 ダッシュボードの6連メータには細い金属線で縁取りを追加し、ABCペダルも追加してあります。また、資料の実車写真を参考にして、助手席側に各種ナビゲータ用機器やコマ地図を束ねたバインダーのイメージを再現してみました。


6.ホイールの調達

 このキットにはTOM'sの旧タイプの井桁ホイールが付属されていますが、実車の画像を見る限りは当時のトヨタの4本スポークタイプのラリーホイールを装着しています。当初は自作することも考えましたが、ヤフオクに3Dプリンタで製作した各種ホイールが出品されている中に、同じデザインの"TOSCO ラリーホイール"があり、早速落札して取り寄せました。
 14インチ相当の外形はオーバースケールですが、キットのラリータイヤと組み合わせには全く問題なく、車体に取り付けてみたところ、思ったより違和感はありません。

7.完成

 一通りの加工が終わったところで、グレーのサーフェイサーを吹いてボディの仕上がり状況や全体的なイメージを確認し、細かな修正後に、ボディにタミヤのカラースプレーのオレンジをスプレーして数日間充分乾燥させます、その後、ラジエータグリル、窓枠などの塗装、ドアノブやキーホールなどの仕上げを行ってからデカールを貼りましたが、懸念していたデカールの劣化もなく一安心です。
 最後に下回りと内装、ボディを組み合わせて、ミラーやワイパー、バンパーなどを取り付けて、一応完成としました。

完成

完成


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