はじめに

 このページはFORD GT Mk.W(以下、Mk.W)の製作記です。
 Mk.Wのキットは1983年頃にユニオンモデルから発売された当時に製作しましたが、今回は最近入手したテスター(TESTORS)のキットを製作しました。

1.FORD GT Mk.Wについて

FORD GT Mk.W Mk.Wは前年1966年のMk.Uに続いて、ル・マン24時間2連覇を実現するために開発されました。1965年から革新的なレーシングカーとして開発を進めていながら、数々の問題点をクリア出来ないまま計画が頓挫していた"J"カーをベースとして、アルミハニカム構造のモノコックフレームに、再設計されたエアロダイナミックデザインボディを組み合わせたモデルとなります。

 Mk.Wは67年3月末のセブリング12時間レースでデビューウインを飾った後、同年のル・マン24時間に4台が投入され、シェルビー・アメリカンからエントリーしたゼッケン1が見事優勝したのでした。

 Mk.Wは走行距離がル・マン史上初めて5,000kmを越えたとともに、ユノディエールのストレートでは340.05km/hという最高速度も記録し、2位のフェラーリ330P4を圧倒するレースとなりました。ちなみに、ゼッケン1のドライバーはダン・ガーニー/A.J.フォイトで、マシン、ドライバーともにオールアメリカンによる初制覇となったのも話題となりました。

2.使用キット

使用キット  GT40は日本国内でも昔から多くのプラモデルメーカーがキット化していますが、Mk.Wのキットで私が見たことがあるのは、外国メーカーではIMCとMPCの二社、国内メーカーでは中村産業だけです。今回製作したキットのオリジナルは今から50年以上前の1968年頃にIMCから発売された製品で、IMCが廃業後は、TESTORSが1977年頃に、日本のユニオンモデルが1983年に再販しています。
 私が製作したのはTESTORSのキットで、デカールこそ新たに起こされていますが、キットとしての仕様変更は一切なされていないようですし、金型の痛みによるバリや部品表面の荒れも多く、部品の摺り合わせや整形にかなりの手間が予想されました。
 それでも、50年以上前に設計されたキットにもかかわらず、前後カウルが開閉し、内装やエンジン、足回りも再現されていて、ボディスタイルの再現性もなかなかのもので、当時のアメリカ製キットの技術水準の高さが伺われるキットです。


3.参考資料

Sport Prototype 1967 part01  今回の参考資料は「Sport Prototype 1967 part01」です。このムックはモデルファクトリーヒロから出版された写真集で、掲載されている写真は日本人レースカメラマンのパイオニアの一人であるジョー・ホンダが撮影したものです。
 本写真集は1967年の「ル・マンテスト・デイ」「タルガ・フローリオ」「ル・マン24時間」の3イベントで撮影された写真が収録されています。














4.製作過程

 このキットは内装やエンジン、足回りが再現されている精密なキットではありますが、なにしろ50年以上前に発売されたキットですので、真面目に改修すると大変です。ということで、今回はこれほどのキットを製品化したIMCに敬意を表して、最低限の改修のみとすることにしました。

4-1.ボディ

  • フロントボディパネル
    ロアボディパネル下面に1mm厚のプラ板を貼り付け・整形して、実車換算で約25mmほど厚みを増やすとともに、ラジエータグリル形状修正
  • リヤデッキパネル
    サイドエアダクト裏側の形状をスムーズに空気が入るような形状に修正するとともに、リヤウインドウ後方にサービスリッド追加
  • リアエンドパネル
    側面のリヤスポイラーを一旦切除して、ル・マン出走車のリヤスポイラー形状になるようプラ板を接着・整形

4-2.インストルメント・パネル

インストルメント・パネル
 キットのインストルメント・パネルはGT40 Mk2に近いイメージで、ル・マンに出走したMk4のものとはかなり異なり、当時のIMCがモデルとした実車は不明です。そこで、インストルメント・パネルは資料やネット上の画像を参考に改修しました。
 フラ板でベースを作り、プラ丸棒やプラパイプで、メーターや各種スイッチ、警告ランプなどを付加して、それらしく再現してみました。




4-3.その他

  • ヘッドライト
    キットは2灯式のヘッドランブとウインカーレンズがメッキされた一体のものだったので、ディティールアップパーツとして市販されているアルミ挽き物の反射鏡とレンズに置き換えました。ウインカーレンズは透明プラ丸棒で作成しています。
  • エンジンルーム
    50年以上前のキットとしては細かく作り込まれていますが、実車に近づけるためにはオイルクーラーその他の補機類についてはかなり加工が必要となります。そこで今回はプラグコードの追加、ホーリーキャブレターにかぶせてあるエアチャンバーの加工にとどめました。

5.塗装

 ボディとシャーシはあらかじめグレーサフを吹いて、パーティングラインやヒケを修正した後、ボディ表面はブライトレッド、裏面はセミグロクブラック、シャーシはシルバーメタルで塗装しています。塗料はいずれもタミヤのスプレーです。
 エンジン、サスペンション、コックピット内部、ホイール等も、基本的にタミヤのスプレー、ラッカー、エナメルなどを使い分けています。

 デカールはさすがに劣化が心配だったので、念のため、アメリカのWebサイト"Indycals"が提供しているデカールを取り寄せていましたが、なんとキットのデカールがまだ生きていたため、軟化剤やデカールのりを駆使して貼ることが出来ました。

6.完成

 開閉可能な前後カウルとルーフパネルの調整、各ウインドウやミラー、ワイパー等の取り付けで、とりあえず完成です。相変わらずの妥協の産物ですし、かなり手間は掛かりましたが、50年以上前のキットとは思えないほど実車のイメージを再現している好キットでした。

完成

完成

完成

完成

完成

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