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TOEI 小旅行車(3×8速仕様)- 2018/12 完成

はじめに

 2018年12月に700×28C旅行車を組み上げました。とは言っても全くの新車ではなく、2004年にオーダーした700×35Cランドナーを全面リニューアルしたものです。

 ごく一般的な直付け工作を施したラグ付きホリゾンタルフレームに、1980〜1990年代の国産部品を中心にアッセンブルし、ダイナモ駆動の電装、フルガード、フロントキャリアなどを装備したことで、全体的な雰囲気は1980年代のマスプロメーカー製高級スポルティーフに近いものとなりました。

 まあ、知り合いの自転車仲間からは、『また同じような自転車を作りましたね』と言われてしまう自転車ですが。

1.リニューアルの経緯:構想からフレーム完成まで

 2017年6月末に還暦を迎え、それとともに大学卒業以来勤めた会社を定年退職となりました。知り合いの自転車仲間の中には、還暦記念号を製作する方も結構いるのですが、 定年後の再就職や、退職時点の東叡社の納期が2年近くまで伸びている事などもあって、このときは新たな自転車の製作は一旦保留としました。

 さて、定年後の再就職先は親戚が経営している自転車小売店で、土日は通常勤務で休日は週1日となり、サイクリングに出掛ける機会はどうしても少なくなります。保有している自転車も出番が減り、特に700×35Cのオンオフ兼用タイヤを装備したランドナーはラックに掛けたままで埃をかぶっていました。この自転車は2004年にオーダーしたもので、完成以来15年目に入っています。荒れた林道を走る機会も減っていますし、この自転車をもう少し有効活用するための改装を思い立ちました。

René Herse PARIS-BREST 古くからのサイクリスト諸氏であれば、このイラストにある René Herse "PARIS-BREST" というカタログモデルをご存知の方も多いかと思います。(イラストは1977年ベロ出版社発行「イラストによるスポーツ車と部品の変遷」より転載)
 基本的には、現在も開催されているブルベ「パリ・ブレスト・パリ」に代表される、長距離サイクリングイベントを走ることを想定した旅行車だと思われますが、エルスらしく各種特殊工作を施した趣味的かつ高性能な旅行用自転車です。

 私が現在保有している他の旅行車は、舗装路中心のサイクリングを想定して、カンパニョーロアテナ11速と完組ホイールを採用した700×26C、SRAMダブルタップ10速とカーボンフォークを採用した700×22Cの、いずれも比較的近年のレース用部品でまとめた軽装備の自転車です。今回はもう少し守備範囲を拡げるために、フロントトリプルギヤ、グラベル走行対応28Cタイヤ、よりしっかりした電装品等を装備することにしました。また、1980〜1990年代の国産部品中心の部品構成としつつ、"PARIS-BREST" が醸し出す伝統的な旅行車の雰囲気を再現することもテーマの一つとしました。

 フレームを川口の東叡社に持ち込んだのは2018年の10月中旬です。今回のフレームリニューアルでは、再塗装とフロントキャリア新規製作を含めて9点の変更・追加項目を予定していましたが、東叡社から更に2点の工作アドバイスがあり、計11点の変更・追加工作をすることにしました。特に大きな変更点は以下の4点です。

 ・カンティブレーキ台座を除去して吉貝GC610センタープルブレーキ台座を追加
 ・左シートステーにダイナモ直付台座を追加 ※ダイナモコードはヘッドラグ下部まで内蔵
 ・ソービッツ501ヘッドランプ直付フロントキャリア新規製作
 ・700×35Cから700×28Cタイヤへの変更に伴うブリッジ半径・肩下寸法の縮小 ※東叡社アドバイス

 ちなみに東叡社のピーク時のオーダー納期は1年半から2年ほどだったようですが、最近はすこし落ち着いてきたらしく、納期は年内ということで、これなら2月初めの毎年恒例の御前崎オフに充分間に合います。Y社長の言葉を信じて、その場で発注しました。

 そして、11月中旬に東叡社のY社長から完成した旨の連絡が来ました。年内どころか発注後1ヶ月で完了という、予想以上に早い仕上がりでした。たまたまフレーム製作の狭間だったのか、こちらが「御前崎に間に合わせたい」としつこく(苦笑)言っていて「面倒な奴だなあ」と思われたのかは定かではありませんが、無事11月20日に引き取ってきたのでした。

 以下、今回のリニューアルにおける改装項目の一覧です。
改装項目一覧

2.フレーム仕様

  • ヘッドラグ・フォーククラウン回り

    ヘッドラグ・フォーククラウン回り ラグはノーマルな形状のロングポイントイタリアンカットです。フォーククラウンはいわゆる剣先カットと呼ばれている加工を施してあります。
     カンティブレーキからセンターブルブレーキに変更したことで、より軽快な雰囲気に変わりました。私は昔からヘッドラグとフォーククラウンのメッキ仕上げが好みなのですが、今回センタープルブレーキ台座を直付し直したことで、残念ながらフォーククラウンのメッキ加工は無しとなりました。

     ヘッド小物はリニューアル前に装着していたNTNウイニング軽合ヘッド小物を継続使用しています。











  • シートラグ回り

    シートラグ回り 2本巻きシートステーはスプーンカット笹葉タイプ加工を施してあります。シートラグは標準仕様のロストワックス製ですが、ロウ盛り加工によりシートピン台座部分がラグと一体となるよう仕上げています。

     シートテール台座には、台湾製のUSB充電式LEDテールライト"LM-016 グランボアスペシャル"を取り付けてあります。









  • ダイナモ直付加工

    ダイナモ直付加工 今回のリニューアルでは、左シートステーにダイナモ直付台座を追加しましたが、この工作は1976年にオーダーした650×38Bランドナー以来、42年振りとなりました。もちろんダイナモコードは内蔵ですが、カーボンブラシによる完全内蔵はせず、ヘッドラグ下までとしています。

     ダイナモは定番のソービッツやシビエでなく、1980年代のブリヂストンアトランティスやユーラシア等に採用されていたミツバ製です。当時のブリヂストンの高級スポーツ車に採用されていたダイナモは何世代かありますが、ユーラシアグランが登場した頃から、取付寸法がソービッツ12DNやシビエパワー95との互換性を持つようになりました。確か、当時のブリヂストンの企画設計担当の方がダイナモの製造メーカーに働きかけたのではないかと思います。




  • その他の工作

     いわゆる特殊工作は特にありません。例えば、東叡社のスタンダードフレームでもリヤブレーキワイヤーは内蔵ですが、このフレームは内蔵工作はしていません。
     強いて書けば、リヤブレーキアウターダボと変速ワイヤーダボに割りを入れて、メンテナンスのしやすさと輪行時のワイヤー回りのトラブル防止を図っている程度です。
     また、なおオーダ当初にロー付けされていたゴム帯チェーンプロテクターは除去し、ボトルケージ台座も増設しました。

  • カラーリング

     今回はトラディショナルで端正な雰囲気を出したかったので、メタリックスカイブルー単色です。ダウンチューブの"TOEI"ロゴの下に"SPORTS MODEL"ロゴを付加しているのは、私の他の自転車と同様です。
     トーエイのヘッド/ロゴマーク、サドル、レバーパッド、バーテープ、アウターケーブルなどのカラーも、私なりの感覚でフレームカラーとの組み合わせで決めました。

4.パーツ構成

 今回は、1993年頃のサンツアーシュパーブプロ最終型8速仕様の変速機とハブを使いたかったため、他の部品もほぼ同年代に発売されていた国産部品中心にまとめました。

  1. ホイール系

    Wheel ホイールは、長い間ストックしてあったカセットフリー仕様のシュパーブプロ前後ハブとトラディショナルな断面形状のアラヤRT-520リムを星ステンレススポークで組み上げました。タイヤは当初は、オールラウンドな性能で結構人気がある現行品のパナレーサーグラベルキング28Cとしましたが、現在はヴェロフレックスマスターの28Cに変更しています。※画像は組み上げ当初

     マッドガードは昔からお気に入りの本所NH-58で、自転車仲間から私の自転車のアイコン(苦笑)とも言われている松葉ステーを組み合わせています。私は遠い昔の学生時分、ブルーメルクラブスペシャルを装着したロードレーサーで通学していたのですが、NH-58とクラブスペシャルは断面形状がよく似ていて、そのあたりが刷り込みとなっているのかもしれません。

     マッドフラップも私の自転車のお約束で、ゴム板から切り出したものをガード裏側に強力タイプの両面粘着テープで装着しています。

  2. 駆動系

    Chain Wheel クランクセットは一昔前のスギノRD-600T、BBは現行品のスギノBBCFです。RD-600TはPCD130-74のトリプルクランクですが、純正のチェーンリングは表面仕上げが梨地で好みではありませんので、TAの現行品のALIZEのアウターとミドル、ZELITOのインナーを組み合わせてあります。

     スプロケットはシュパーブプロ最終型と同年代のサンツアーAPカセットですが、このカセットはMTB用のマイクロドライブのため、フリーボディへの固定方法の違いにより、そのままではシュパーブプロのフリーハブには装着出来ません。そこで埼玉の銀輪庵さんに駆け込み、シュパーブプロのトップギアとセカンドギアを探し出していただき、後半6段と組み合わせることで、無事シュパーブプロのフリーハブに装着することが出来ました。

     チェーンはストックしてあったサンツアーAPで、ギヤレシオはフロント48×38×28T、リヤ12〜28Tです。

     ペダルはさすがに今更トークリップを使う気にはならないので、比較的軽量な片面SPDのディズナFPです。



  3. 変速系

    Derailleur 変速系統は、サンツアーシュパーブプロ最終型8速仕様のリヤディレイラーとWレバー、同年代のサンツアーXC-PROフロントディレイラーの組み合わせです。

     フロントディレイラーは当初シュパーブプロを予定していましたが、フロントトリプルの変速にはやや無理があり、XC-PROに変更したところ、申し分ない変速性能となりました。




  4. ブレーキ系

    Brake ブレーキ本体は1980年代の吉貝グランコンペセンタープルの未使用デッドストック品です。ブレーキシューはさすがに当時物では劣化もあって心許ないので、吉貝から復刻されているGC76ALに交換してあります。

     ブレーキレバーも当時物のグランコンペGC210ですが、クイック機構が無いとアーチワイヤーの脱着が大変なので、同年代のクイック機構付きグランコンペGC162のレバー部分とGC210の本体を組み合わせてみました。











  5. ハンドル系

    Steering この自転車にはトラディショナルな形状のものが似合いますので、ストックしてあった日東Mod55と日東パール9を採用しました。
     バーテープは色々考えた末、多分30年振りくらいに、VIVAのコットンテープにしてみました。ただし、ハンドル上部部分にはフィジークのゲル緩衝材を巻き込んであります。

     コンピュータはシンプルな操作性とデザインが気に入っていて、長く使い続けているキャットアイのCC-CL200のブルーですが、私の保有自転車6台はCC-CL200です




  6. サドル系

    Saddle サドルはギザプロダクツのVL-1221で製造元は台湾のVELOです。このサドルは裏がくりぬかれたサドルベースによる座り心地がよく、低価格ながらサンマルコリーガル風のややクラシカルな見た目も「パッと見には」それほど悪くないので、現在の私のお気に入りのサドルとなっています。

     シートピラーは40年近く手元に残しておいた藤田ベルトを引っ張り出してきました。








  7. フロントキャリアと電装系

    Lighting 今回新たに製作した7mmパイプフロントキャリアは東叡社定番のセンタープルブレーキ台座直付けタイプです。
     キャリア右側にはソービッツ501ヘッドランプ直付用のコード内蔵式ステーを、左側にはバッテリーランプホルダーをロウ付けしてあります。

     ソービッツ501ヘッドランプには、神戸の自転車仲間の先輩に製作していただいた高輝度LEDユニットを組み込んであり、消費電力の少なさからダイナモの駆動抵抗も軽く、充分な実用性が得られました。
     キャリア左側に装着してあるバッテリーランプも、小型ながら非常に明るい3ワットLEDタイプです。

     なお、リヤガードに取り付けているテールライトはキャットアイのTL-AU165という現行製品で、光センサーと振動センサーにより自動点灯し、リフレクター部分を180度回転させることで点灯オンオフ出来ます。


  8. その他

    Etc. ポンプはCNC削り出しで見栄えも性能も良いレザイン、ボトルケージはミノウラのもので、どちらも使い勝手のよい製品です。

     ハンドルバー右側端部には、小型ながら充分な後方視界を得られるタナックスのイージーミラースポルトを装着しています。









5.スペック


フレーム 基本仕様 カイセイ019Cr.Moフルセット、ロングポイントイタリアンカットラグ、ロスト剣先カットフォーククラウン、ロストストレートエンド、NTNウイニング軽合ヘッド小物
寸法 フレームサイズ:580mm(C-T)、トップ:550mm、リヤセンター:435mm、フォークオフセット:55mm、エンド内幅:F100-R130mm
工作 笹葉タイプ2本巻きステー、センタープルブレーキ台座、変速レバー台座、BB下プラリード、リヤブレーキアウターダボ3点(割入れ)、ボトルケージ台座×2、前後ガード隠し止めネジ、チェーンフック、リヤ上ブリッジ補強板、シートテール台座、ダイナモ台座、ダイナモコード内蔵、7ミリパイプ製フロントキャリア(ソービッツ501ヘッドランブ直付)
塗装 メタリックサックスブルー、ヘッドラグメッキ仕上げ

ホイール ハブ サンツアー シュパーブプロ 8速フリーハブ仕様(36H)
スポーク 星 ステンレス#15プレーン
リム アラヤ RT-520(36H)
タイヤ ヴェロフレックス マスター(700×28C)
マッドガード 本所 NH-58(松葉ステー)※リヤガードは分割加工

駆動系 チェーンホイール スギノ RD-600T(170mm)
チェーンリング TA ALIZE+ZELITO(48×38×28T)
ボトムブラケット スギノ CBBF(軸長113mm)
スプロケット サンツアーAP 8s(12-13-14-16-18-21-24-28T)※トップとセカンドはシュパーブ
チェーン サンツアーAP
ペダル ディズナ FP(片面SPD)

変速機系 フロント変速機 サンツアー XC-PRO
リヤ変速機 サンツアー シュパーブプロ 8速
シフトレバー サンツアー シュパーブプロ 8速

ブレーキ系 ブレーキ本体 吉貝 グランコンペ610
ブレーキシュー 吉貝 GC76AL
ブレーキレバー 吉貝 GC210本体+吉貝 GC162 クイック機構付きレバー

ハンドル系 ハンドルバー 日東 Mod55(420mm)
ステム 日東 パール(90mm)
バーテープ VIVA コットン(水色)

サドル系 サドル ギザプロダクツ VL-1221(ブラウン)
シートピラー 藤田 ベルト(27.2mm)

その他 ポンプ レザイン
ボトルケージ ミノウラ(ブルーアルマイト)
ベル VIVA スプリングベル
コンピュータ キャットアイ CC-CL200(ブルー)

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