追憶のカタログ展Part78:1990サンツアー

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追憶のカタログ展

− Part78:1990年 サンツアー −


 Part78は1990年のサンツアーです。この年からサンツアーは経営危機に陥ります。この頃までは、技術的にはシマノと拮抗している部分もありますが、世界の自転車メーカーへの供給体制ではシマノに大きく水を空けられて、市場占拠率は下降の一歩を辿っていきました。またMTBの電動フロントチェンジシステム"BEAST"の開発遅延や高額なライセンス料の負担などもあり、翌年にはモリ工業の資本参加をあおぐようになりました。
 このカタログで登場した"AccuShift Plus"、"X-PRESS"、"POWERRING"などの組み合わせは、シマノの"STI"とほぼ同等の性能を発揮し、"GREASEGUARD"システムなどの実戦的なメカニズムもありましたが、総合的な開発/供給体制の差が広がってしまったのが現実でした。
 ある意味、このカタログがサンツアーの技術的な頂点を紹介する最後のものと言ってもよいかもしれません。

なお、本カタログはD・T様のご協力により掲載致しました。この場を借りて、御礼申し上げます。

 注.下記の画像は著作権保護対象と思われますが、本ホームページではあくまで趣味の範囲での使用に限定するものとし、特に著作者には届出しておりません。著作権保持者や関係者の方は、何かございましたら、即刻削除等の処置を致しますのでご連絡下さい。


以下の画像は、ほぼA4縦サイズのカタログを拡げた状態で取り込みました。各画像をクリックすると、縦1280×横1810の拡大画像が別ウインドウで表示されます。

1990SUNTOURカタログ-表1/4

表1と表4。この頃は世界的にMTBがブームで、シマノとサンツアーが世界のMTBパーツの二大供給元でした。表4(裏表紙)は代表的なコンポーネント間のシステムチャートです。

"INNOVATION FACTORY SUNTOUR"の宣言

"INNOVATION FACTORY SUNTOUR"の宣言。
「部品」ではなく「作品」を創りたいというところが、いかにもサンツアーらしいと思います。

ACCUSHIFT PLUS

シマノの"STI"(Shimano Total Integration)と真っ向から立ち向かうコンセプトで開発された"ACCUSHIFT PLUS"を紹介しています。

製品名 特徴   対抗シマノ製品

"X-PRESS" インデックスメカニズム(位置決め変速)により、2本のレバーを親指でプッシュする単純操作で変速可能なシフトレバー。   "RAPIDFIRE"
"POWERRING" 変速時のチェーン詰まりを減少させるとともに、変速効率を上げるチェーンリング。   "SG"
"AP CHAIN"、"AP COGS" 形状を見直したチェーンとスプロケットの組み合わせにより、変速性能を向上。   "HG"

当時のニューサイクリング誌でも、これらのパーツを装備したMTBにより、サンツアーとシマノの性能比較をした記事がありました。その時の記事では性能に際だった差はなかったものの、サンツアーはより互換性、汎用性を重視しており、シマノはコンポーネントとしての完成度が高いというような評価をしていたように思います。

ACCUSHIFTその他

製品名 特徴

"COMMAND" 実はシマノのデュアルコントロールレバーより先に世に出ていた製品。ブレーキレバーの手前に固定し、シーソー式にレバーを動かすシンプルな構造で、今でも一部に根強い人気があり。
"AP SHIFTER" 完全な位置決め機構であるフルインデックスモードと、軽いクリック感のライトインデックスモードの切換が可能なシフトレバー。
"MULTI MOUNT" ブレーキレバーとシフトレバーのクランプ部分の幅を狭くすることで、使いやすい位置にセッティング出来る。
"BEAST" マイクロモーターで、チェーンリングの1/4を開閉し、鉄道線路のポイントを切り換えるような動きで変速するシステム。

コマンドシフターはシフトレバーをブレーキレバーの近くに固定し、ハンドルバーから手を離さずに変速操作を可能とするもので、製品としては極めてシンプルなものです。私も使っていた事がありますが、シマノのデュアルコントロールレバーのような精密かつブラックボックスのような機構ではないため、今でもツーリング車に装着している人もいらっしゃるようです。たまにネットオークションに出品されると、結構な値段で落札されています。ビーストはフロント変速回りが専用設計になるし高額だったため、市販車への採用例がきわめて少なく、その開発費用やライセンス料がサンツアーの経営に大きな負担となったようです。

SPECIAL FEATURES

"SE"はブレーキを掛けたときにリムの回転方向に向かって、より締め付ける動きをするカンチブレーキで、今でもネットオークションによく出品されます。グリスガードは部品を分解することなく、外からグリスガンでグリスを注入する事が出来るもので、機構的には昔からあるものです。

XC-PRO

"XC-PRO"はMTB用最高級 コンポーネントです。リヤハブは カセットスプロケット用のフリーハブとフリーホイール用のものの2種類用意されています。スプロケットは7速です。シマノの"XTR"とともに、各社の最高級MTBに採用されていました。ちなみにフロント変速機はとてもキレのいい変速性能を持っており、私は今でも林道用スポルティーフに使っています。

XC-COMP

"XC-COMP"は セカンドグレードで、グリスガードこそ採用されていませんが、性能的には"XC-PRO"とほぼ同等のコンポーネントです。私が持っていたアラヤマディフォックスが"XC-COMP"仕様でした。

XCD

ミディアムグレードの"XCD"です。"X-PRESS"シフトレバーも用意されており、コストパフォーマンスに優れたコンポーネントと紹介されています。

X-1 & XCE

"X-1"は カラーチップの装着によるカラーコーディネートがセールスポイントになっています。"XCE"は価格が表示されていない事からもわかるように、マスプロメーカー向けの普及製品になります。

XCM XCT AC2000 AC1000 FT

このページの製品群もマスプロメーカーの低価格モデル用だと思います。

BUILT FOR SPEED

これ以降のページはロード系コンポーネントの紹介となります。"HELVETIA"は元々スイス連邦を表すラテン語表記ですから、このチームはスイスのチームだったと思います。下の写真のコルナゴがスチールフレーム仕様というところに時代を感じますね。

SUPERBE PRO

"SUPERBE PRO"はシマノの"DURA-ACE"と並ぶサンツアーのトップグレードで、今でも根強いファンがいるコンポーネントです。回転部分の精度や耐久性に定評がありました。私も変速機やチェーンホイール、ハブなどを今も使っています。リヤハブは"XC-PRO"と同様にカセットスプロケット用のフリーハブとフリーホイール用のものの2種類用意されています。フリーホイールタイプのリヤハブにも130mm幅のものがラインナップにあり、私の80年代仕様ロードにも使っています。

SPRINT

"SPRINT"は セカンドグレードになります。マスプロメーカーの中級ロードレーサーにも採用されていました。当時のシマノで言えば"600ULTEGRA"に相当するグレードです。ビンディングペダルも写っていますが、当時の"TIME Equipe Criterium "のOEM供給品です。私も持っているのですが、もはや、当時のクリートを装着できるシューズがありません。

GPX

"GPX"は サードグレードの製品ですが、私自身はほとんど現物を見た事がありません。

RADIUS EDGE BLAZE

こちらは普及価格帯のコンポーネントですが、ほとんどマスプロメーカー用だったのではないでしょうか。

VX SUPERBE PRO TRACK

"VX"というネーミングは、70年代のリヤ変速機"V-LUXE"の後継製品の方が馴染みがあります。右側は"SUPERBE PRO"のトラック用コンポーネントで、中野浩一選手の世界選手権プロスプリントV10を支えた部品として、深紅のNAGASAWA号とともに有名ですね。


 

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