追憶のカタログ展Part52:1978SIMPLEX(サンプレックス)
− Part52:1978 SIMPLEX (サンプレックス) −
Part52は フランスの変速機メーカーSIMPLEX(サンプレックス)の1978年のカタログです。特に60年代以降にサイクリングを始めた方にとっては、なじみ深いブランドかと思います。50年代のスライドシャフト式リヤディレイラーの最高峰である"JUY RECORD60"はツールドフランスなどのレースでも常勝を誇った製品でしたが、いわゆるパンタグラフ式ディレイラーではカンパニョーロやユーレの後塵を拝 することになり、1962年の"JUY EXPORT 61"が最初の製品となります。その後、SIMPLEXはデルリン樹脂を素材とする"PRESTIGE"(プレステージ)を発表し、以後の製品はしばらくデルリン製のものが中心となります。
私と同世代のツーリストにとっては、"PRESTIGE"や"SUPER COMPETITION"(スーパーコンペティション)はなじみ深い変速機の一つと言ってよいのではないでしょうか。これらはWテンションでキャパシティが大きく、ワイドなギヤ比のランドナーにも使いやすい変速機でした。また輪行時にチェーンをチェーンフックに引っ掛けた時に本体が上方に引き上げられる事で、輪行袋に自転車を入れた時に変速機を壊す事故も減ら す事が可能となり、ツーリストにとって扱いやすい製品でした。
しかし、厳しいステージレースにはやはりデルリンでは耐えきれなかったのか、1975年のツールドフランスで優勝したベルナール・テブネのプジョーには、発表直後の軽合金製の"SUPER LJ"が使用されていました。その後、デルリンと軽合金を組み合わせた製品も続々発表されるようになっていきます。しかし、 当時の世界3大総合部品メーカーと言ってもよいCAMPAGNOLO、SHIMANO、SUNTOURの激烈な性能競争とコンポーネント化の前に、SIMPLEXは同じフランスのメーカーであるHURET(ユーレ)とともに市場競争力を失っていったのでした。
このカタログはA4サイズに折りたたまれており、以下の画像は適時展開して掲載しましたが、拡大画像へのリンクも付けてあります。 なお今回はオリジナルのコピーをスキャンしたため、画像がやや不鮮明である事はご容赦願います。
本カタログは東京のK・H様のご協力により掲載致しました。この場を借りて御礼申し上げます。
注.下記の画像は著作権保護対象と思われますが、本ホームページではあくまで趣味の範囲での使用に限定するものであり、かつフランスのメーカーのものでもあるため、著作者への届け出はしておりません。
表紙は「変速機」を指すフランス語"DERAILLEURS"と伝統のマーク、住所等がシンプルに配置されています。
下端には創立者である"LUCIEN JUY"の名前も記載されています。※左記画像の拡大画像(725×1024)はこちらをクリック。
前後変速機、シフトレバーの全製品が記載されています。リヤ変速機は左から7個がエンドブラケット付きの普及タイプで、 残りの4個は高級タイプのLJ1000/LJ4000/SLJ5000/SLJ6000です。
このカタログの時代には、もはや"PRESTIGE"のような固有のネーミングはありません。
それぞれの型番の後には、プーリーケージの形状とエンドブラケットの有無を示す記号が付加されており、意味は以下のようになります。
- プーリーケージの形状
CP:レーシングタイプ
T :スポーツタイプ
GT:ツーリングタイプ(ロングケージ)
- エンドブラケットの有無
P :エンドブラケット有
SP:エンドブラケット無(フォークエンド直付)例えば、左から2番目の"S001 T/P"は、スポーツタイプでエンドブラケット付き、右から3番目、177gと最軽量の"LJ4000 CP/SP"は、レーシングタイプでフォークエンド直付となります。
フロント変速機も同様の記号が付けられています。左3つのスライド式は、この当時でもすでにクラシックなものでした。私は何故かこのタイプが好きで、長く使っていましたが。
Wレバーはスタンダードタイプとレトロフリクションタイプに大きく分かれています。スタンダードタイプの右から4番目と右から2番目は使っていた方も多いと思います。またレトロフリクションタイプはワンウェイクラッチとスプリングが内蔵された引きの軽いタイプで、プロのレースの世界でも、このシフトレバーとカンパの変速機という組み合わせが多く使われたという話を聞いたことがあります。
※上記画像の拡大画像は3つに分かれています。それぞれ、左、中央、右をクリックすると拡大画像(725×1024)が表示されます。
こちらは変速機以外の製品です。特にシートピラー、5ピン止めのWリングは使用していた方も多いでしょう。5ピン止めのWリングは板厚が薄く、すぐゆがむと言われていましたが、私は46×28のリングとストロングライト49Dクランクの組み合わせが好きでした。
※上記画像の拡大画像は2つに分かれています。それぞれ、左、右をクリックすると拡大画像(725×1024)が表示されます。