趣味的な700Cツーリング車を組む

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趣味的な700Cツーリング車を組む

2007/05/05:一部加筆修正
2011/03/01:一部加筆修正

はじめに

 20年以上前に当たり前に存在していたランドナーやシクロスポルティーフは、当時のパーツでないと作れないのでしょうか。私は決してそんな事はないと思います。
 若かりし頃に当時のランドナーやスポルティーフでサイクリングを楽しんでいた方が、最近サイクリングを再開したら、市販のスポーツ車やパーツがすっかり様変わりしていて浦島太郎状態になってしまった・・・そんな方が意外に多いようです。私もその1人でした。

 以下に、ランドナーやシクロスポルティーフといったやや趣味的な700Cツーリング車の製作について書いてみますが、「趣味的な」というのは機能を満たすだけでなく、伝統的なツーリング車の持つ機能と雰囲気も加味するという事です。
 ここでは「趣味的=クラシック」とは考えておりませんが、逆に「古いもの=使えない」とも考えません。私がこの世界に入った当時のオーダー車も、「当時の現行パーツ」を採用する事で乗り手のニーズに応じた機能と性能、趣味性を満たしていました。伝統的なツーリング車の持つ機能性には現代にも通じる要素が少なくありません。

 「温故知新」、「古きをたずねて新しきを知る」という言葉があります。その精神で、ことさら大上段に構えることなく、過去の自分なりの経験を生かしながら現行パーツをごく当たり前に活用する事を前提にしつつ、私自身の考え方やここ数年の経験に基づいて書いていこうと思います。
 もちろん反論・異論・疑問等も当然あると思いますが、とりあえずちょっとでも参考になる点があれば嬉しいです。
 


1.ランドナー、スポルティーフの定義

 ランドナーやスポルティーフという車種の定義については、様々な書物やHP等で書かれています。かなり狭い意味で捉えている場合もあれば、相当広い範囲で捉えている場合もあります。また古今東西のマスプロメーカーや有名な工房がそれぞれの車種名として使用している場合もありますし、自転車好きな一人一人の個人の思い入れによっても定義は様々です。すなわち絶対的な定義は無いと言っても過言ではないでしょう。
 したがって話を進める前に、このページにおけるランドナーとスポルティーフの定義を明確にしておきませんと、ある意味、誤解を生じるケースもあります。
 ここでは、以下の定義を前提とします。
 

車種名 日本語名 ホイールサイズ 定義と使い方、装備
ランドナー 小旅行車 700×28〜38C 常用速度は15km/h〜25km/h程度。
日帰りから3泊程度までのツーリングに使用し、宿泊は何らかの宿泊施設に泊まるのが前提。
荷物はフロントバッグ(+サドルバッグ)搭載程度で、キャリヤは原則フロントのみ。
街道筋の走行が中心だが、クルマが通行可能な峠道や林道を走る場合もあるので、それに対応出来るギヤレシオ、タイヤとする。
雨天/夜間走行に備えたマッドガードと電装品も装備する。
スポルティーフ 快走車 700×23〜28C 常用速度は25km/h〜35km/h程度で、比較的平坦な舗装路を速度をあげて楽しむ。
日帰りから1泊程度までのツーリングに使用し、宿泊は何らかの宿泊施設に泊まるのが前提。
荷物はフロントバッグ1個程度で、キャリヤはフロントのみ。
舗装された街道筋の走行が中心だが、クルマが通行可能な峠道を走る場合もあるので、それに対応出来るギヤレシオとする。
雨天/夜間走行に備えたマッドガードと電装品も装備する。


  全体的なイメージとしては、日本でも80年代中頃まで各マスプロメーカーが発売していたドロップハンドルのサイクリング車です。ランドナーとスポルティーフはどちらもツーリング用の自転車ですが、私個人の感覚では、ランドナーは山里も含めた日本の気候風土の中のツーリングを楽しむ自転車で、スポルティーフはランドナーより細めのタイヤで舗装路の快走ランを楽しむのが中心となる自転車です。
 ロードバイク、クロスバイク、MTB主流の現在、現在このようなツーリング車を発売している日本のマスプロメーカーは、丸石(
エンペラーツーリングマスター)、アラヤ(フェデラル ・ランドナー/スポルティーフ)、パナソニック(OSC5/OSD5)ぐらいでしょうか。

※最近自転車ツーリングを始めた人の中には、例えばGIANTのGREAT-JOURNEY、LOUIS-GARNEAUのLGS-GMT等を現代風ランドナーととらえる場合もあるようですが、これらはもっとヘビーデューティな長距離ツーリング用であり、MTBをベースとして昔のキャンピング車を発展させたものだと思います。

 ちなみにランドナー、スポルティーフという単語はもともとフランス語で、
RANDONNEUR(ランドナー:旅行のための自転車)、CYCLO-SPORTIFS(シクロスポルティーフ:「スポーツの」ための自転車)と表現することが多いようです。
 


2.ツーリング車としてのランドナーとスポルティーフ

 下の4枚の写真は、1981年のブリヂストンのランドナーとスポルティーフと、私が保有している700×35Cランドナーと700×23Cスポルティーフを並べたものです。外観的には、せいぜいブレーキレバーがワイヤー外出しタイプかエアロタイプか、ペダルがトークリップ式かSPDか・・・そんな違いが目につく程度です。
 ブリヂストンは当時の現行パーツ、私の自転車は約10年前から最近のパーツを装備しており、性能的にはかなり差があるのも事実ですが、全体的な雰囲気にそれほど大きな差が無いと思います。もちろん当時の段階で既に機能的には確立している部分もあります。

 私はランドナーやスポルティーフという車種名は、基本的にはツーリング車として求められる機能で捉えています。機能で定義するという事は、すなわち乗り方や用途で分類するということであり、時代やパーツを限定するものではないと考えています。言い換えると、当時のパーツでまとめた旅行車だけがランドナーということでなく、昔も今もランドナーはランドナー、スポルティーフはスポルティーフとしての存在価値があると考えています。

 

1981年型ブリヂストンアトランティスツーリング

2004年製作Nakajima製ランドナー

1981年型ブリヂストンアトランティススポルティーフ

1999年製作Nakajima製ライトツーリング


3.趣味的なランドナーやスポルティーフと現代のスポーツ車との相違点

 現在市販されているスポーツ車は、MTB、ロードバイク、 シクロクロス、クロスバイク、フォールディングバイク等が大部分を占めており、それらの自転車でツーリングを楽しんでおられる方も多いです。
  純粋に機能だけで捉えれば、例えばクロスバイクにアタッチメント式のキャリヤやガードを取り付けて、ハンドルバーにLEDライトを装備すれば、ツーリングには何の問題もありません。
 実際、一部のシクロクロスモデルの中には、ブリッジにガードの隠し止め用ネジが埋め込まれているものもあります。カンチ台座に市販のキャリアを装備してフルガードを取り付ければ、700Cツーリング車として立派に機能します 。
 ですが、私の感覚では、ツーリングにはツーリングにより適した自転車があってもいいはずだと思っています。そしてツーリング車は単なる旅の道具としての機能を満たすだけでなく、自転車そのものを趣味の対象とした時に、1台の自転車としてのまとまりを楽しむものにもなると思っています。

 では、上記のような自転車と趣味的なランドナーやスポルティーフとの違いは何でしょうか。うまく表現出来ませんが、私は以下のように考えています。

  1. ツーリング車として求められる機能が後付けでなく最初から装備されていること。
  2. 装備された個々のパーツやそれらの組み合わせに無理・無駄が無く、乗り手の体力や 志向に合わせて、各パーツの持つ機能や性能をきちんと発揮出来るよう組み付けられていること。
  3. 趣味性の高い自転車として、細部の工作がいき届き、スタイル的にもまとまりがあること。

 そしてこのような自転車は、機能的にも性能的にも進歩した現在のパーツを装備することによって、より余裕のあるツーリングを楽しむための頼もしい相棒となるばかりか、眺めて美しく、所有する喜びのあるものとなり得ると考えています。

 フランスやイタリアの60〜70年代のパーツでまとめられたランドナーやスポルティーフは、それはそれでノスタルジックな美しさがあります。私も含めて、20年前、30年前にサイクリングの楽しさに目覚めた人であれば、当時欲しくても手に入らなかった自転車、あるいは当時乗っていた自転車を再現したいという気持ちをお持ちでしょうし、そういう自転車を否定する気は全くありません。
 もちろん私自身にもそのような気持ちはあります。実際、ツーリング車ではありませんがこんな自転車も作りましたしね(笑)

 また私がサイクリングを始めた70年代前半当時は、それらの輸入パーツは、国産パーツと比べてみても、機能的にも性能的にもデザイン的にも優れていた製品が多かったのも事実です。
 ですが、ここではあくまで現行パーツを主体としつつ趣味的なランドナーやスポルティーフをまとめ上げるが主題ですので、以下の章で具体的なパーツ選定などについて書いていくことにします。
 


4.現行品を中心としたパーツアッセンブル例

 下表に各パーツグループ別の選定例を示します。現行パーツ主体としますが、少し前のものであってもネットオークション等で比較的容易かつ適正な価格で入手出来るものであれば、それらも選択肢とします。あくまで一例ですので、予算や好みで適時変更してください。
 ちなみに最近はパーツを組み込む事を『インストール』と言うようですが、トシのせいか、どうもなじめません(苦笑)

(1)スポルティーフのパーツ選定例

 添付したEXCELファイルに、2006年カンパニョーロケンタウルをベースとしてまとめた一例を示しました。
 70年代当時にサイクリングを始めて最近復活された方にも違和感なく見ていただけるよう、現行パーツを中心としながらも、あえてカーボンパーツは使わない例としてみました。
 チェーンホイールはコンパクトクランクにしており、インナーリングは36Tか34Tが選択出来ますので、脚力とフィールドに合わせればよいでしょう。フロントダブル+リヤ10速の20速仕様となります。

スポルティーフのパーツ選定例

(2)ランドナーのパーツ選定例

 添付したEXCELファイルに、2007年のシマノティアグラクラスを中心とした国産パーツでまとめた一例を示しました。こちらはフロントトリプル+リヤ9速の27速仕様となります。
 前項のスポルティーフと比較すると、タイヤが太めとなり、チェーンホイールはトリプル、ブレーキはカンティ装備という点が異なりますが、実はそれ以外はほとんど似たようなものになっています。
 

ランドナーのパーツ選定例

(3)手元シフトと多段スプロケットについての補足

 変速システムは上記いずれもエルゴパワー・STIレバーを採用した手元変速としています。旧来のツーリング車はWレバーが普通でしたし、ブレーキレバーと変速システムを一体化したシステムのトラブルを心配される向きもあるようですが、例えば激しい転倒等によるブレーキレバーの破損のようなケースでは、乗り手にもそれなりのダメージが伴うでしょうし、そうなるとWレバーにするしないとは別の問題となるように思っています。未開の地のアドベンチャーツーリングなら別ですが、通常のツーリングであれば、トラブルが発生しても致命的な事にはならないと考えています。

 スプロケットは今や10速が標準となりつつあります。私もこの世界に復帰した当初は、『ほとんど1枚飛びで、フロントと組み合わせると似たようなギヤ比も多いし、無駄じゃないか』などと思いました。
 でも手元シフトとの組み合わせで実際に使ってみると、風向きや勾配のちょっとした変化や疲労度に対して、なかば無意識に変速操作を行って、有効なギヤ比を選択出来る事や、上り坂の途中でも確実に変速できる性能のもたらすメリットが体感出来ました。
 そういう意味では、せっかくの9速や10速のスプロケットを有効に使うためにも手元シフトの利便性ははずせないと考えています。

 ただし最近の位置決め機構付きのWレバーも実は意外に使い勝手が良くて、7速か8速くらいまでなら結構使えます。私も1台はあえてWレバー仕様にしていますし、シマノもデュラエース10速仕様のWレバーまで律儀に用意しています。でも10速のギヤをWレバーで適時変速させるのは、さすがに面倒な気もしますね。
 


5.フレームについて

 フレームはオーダーメイドを前提とします。ツーリング車を美しく機能的にまとめるには、定評あるビルダーの豊富なノウハウが不可欠と考えるからです。特にマッドガードやキャリヤ、電装品をいかにスマートに、かつ機能的に組み付けるかという点はなかなか難しく、センスが現れる部分です。
 そういう意味では、例えばトーエイ社のフレームは、ツーリング車に関する長年のノウハウの蓄積があり、いわゆるスタンダードフレームベースに多少の追加/変更工作を施す程度で、かなり良いものが出来上がると思います。輸入品のロードフレームなどと比較しても、価格的には決して高くはありません。
 常用速度、主用途、搭載荷物の量などをベースに、ツーリング車の組み付けに定評のあるショップでよく相談されたほうがいいでしょう。
 もちろんフルオーダーするという選択肢もありますが、その場合はそれなりに高価なものとなりますし、ある程度経験を積んでからでもいいと思います。
 


6.組み付けのポイント

 私の考える外観上の組み付けのポイントは以下の通りです。

  1. マッドガードの長さとタイヤとのクリアランスが適正であること。
    ※特にフロントガードの後端の地面からの高さがポイント
     
  2. キャリヤが地面と平行かつマッドガードとの隙間が必要最小限となっていること。
    ※市販の汎用キャリヤでは、うまく調整しきれない場合が多い。
     
  3. 各種アウターケーブルの長さや色が適切であること。
    ※ブレーキや変速機の性能を損なわない適切な長さにカットし、フレームカラーとの調和も必要。
     
  4. フレームと各パーツの色彩的なバランスがとれていること。
    ※バーテープやサドルのみならず、ポンプやホドルケージなどにも配慮します。
     
  5. ハンドルやサドルの固定位置がフレームサイズとバランスが取れていること。
    ※これには諸説あり、好みもありますが、5m〜10m離れて見てみましょう。ちなみに私の場合はサドルはやや高めになっています。

 これらは簡単そうに見えて本当に難しい部分で、私もなかなかうまく行かずに試行錯誤している部分でもありますし、オーナーのみならず、 ビルダーやショップの力量やセンスが如実に表れる部分でもあると思います。
 


7.実践例

 次のページでは、私の自転車を題材として具体的に書いてみます。なにしろ自分の自転車ですから遠慮せずに書けると言うことで、気に入っている点、課題、失敗等をありのまま書こうと思います。一つの例として、読んでいただける方の参考になる点が一つでもあるといいのですが。

現行部品を中心としたスポルティーフの組み付けの一例

 


 

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